幼児期初期に言語発達の遅れを呈したADHD児の事例検討（査読有）

本研究では、幼児期前期に言語発達の遅れがあり、後にADHDと診断された子どもの事例を報告し、特に特異的言語発達遅滞（SLI）との関連から検討をした。対象児は２歳１０ヶ月ごろから言語の表出が見られ、その言語獲得期における言語発達の様子について、児童発達支援事業の施設における保育士との相互作用を６ヶ月間、縦断的にビデオで記録をし、表出された発話や行動を分析した。その結果、言語表出の始めは、動作にともなって表出される掛け声や、感情を表す表現が先に表出され、その後で身近な名詞が表出される様子が観察された。観察期間においては動詞の表出はなく、また、語連鎖も見られず、１単語による表現がほとんどであった。その一方で、初期言語である、アイコンタクト、共同注意、社会的参照は観察開始当初より見られていた。本事例報告が、発達障害児の早期発見早期支援の充実へ向けた基礎資料となることが望まれる。
印刷中

東北福祉大学特別支援教育研究室研究紀要