6 カ月齢および9 カ月齢の乳児に対する母親の対乳児発話(IDS)の、発話機能と音響的特徴を分析し、乳児の性別、月齢、遊び場面の各要素がIDS に与える影響を検討した。結果は次の3 点に要約される:(1)介入的発話は男児に対する方が女児に対するよりも多く、質問的発話は女児に対する方が男児に対するよりも多かった。(2)対9 カ月齢では対6 カ月齢と比較して、介入的発話や質問的発話によって子とのやりとりを引き出すような発話が多く、高い平均基本周波数と遅い発話速度の、よりIDS の音響的特徴をそなえた発話が出現した。(3)絵本場面では叙述的発話と質問的発話が多いこと、玩具場面では応答的発話が多く、絵本場面よりもピッチ変位が大きくて発話速度も速いことが確認された。以上のことから、乳児の性別、月齢および遊び場面の各要因が、IDS の発話機能と音響的特徴に影響を及ぼすことが明らかとなった。
pp.112-135(筆頭著者として全文を担当)
庭野賀津子、梶川祥世、佐藤久美子