COVID-19の世界的流行により、人々はマスク着用を余儀なくされた。聴覚障害者にとって、相手の口元がマスクで遮蔽されると口形の読み取りの妨げとなるとともに顔表情も見えにくくなるため、コミュニケーションに支障が生じる。そのため、特別支援学校(聴覚障害)を始め聴覚障害児・者が学ぶ教育現場においては、フェイスシートや透明マスクを利用するなど、顔表情や口形が見えるような工夫をしてきた。2023年に新型コロナウィルス感染症の感染法上の位置づけが5類に移行したものの、終息はしておらず、教育現場ではマスクを着用する機会が多い。しかし、マスクによって下部が遮蔽された顔の表情認知に影響する心理学的特性や、認知の際の脳反応について検討した研究は少ない。発表者らは、情動知能がマスク顔の表情認知に関連するのではないかという仮説を立て、脳機能計測をもとに検討することとした。情動知能とは、感情について正確に推論する能力と、思考を高めるために感情や情動的知識を利用する能力とされている(Mayer et al., 2008)。そこで本研究では、性別・感情別・マスク有無の顔について、顔表情の認知時における脳反応の計測を行い、脳反応と情動知能の相関を調べて、マスク顔認知に関する基礎資料を得ることを目的とした。