災害に直面した地域住民において、震災前に存在した地域活動の再開や新たな活動の誕生は生活の活発化をもたらし、良好な健康状態を保つうえで重要な役割を果たすと推察される。そこで、沿岸被災地における健康・介護予防の課題を明らかにすることで、今後の保健福祉システムの再構築に役立てることを目的として、生活不活発者の把握や震災前後の比較による高齢者の身体状況と地域との関わりの変化に関する調査・分析を行った。その結果、震災から約1年半後の生活不活発化は男女ともに75歳以上の高齢者の過半数で見られた。活発な生活を維持している者では、震災前から運動や自治会などを主体とした地域活動に参加し、震災後も再開している傾向が見られた。以上から、震災前からの地域活動への参加や住民の助け合う意識は、被災地域住民の生活機能維持に重要であることが示された。今後、被災地においては災害による休止からの早期再開・新規立ち上げを支援することや、被災地以外の地域においても、住民同士が助け合う互助活動の活発化を図ることが減災の基盤となりうる。
pp.211-220
河村孝幸、鈴木玲子