【目的】我々は音楽を使用した介護予防・健康増進プログラムを「みんなの元気塾」として開発し、福祉施設に特化した通信カラオケ機器に提供してきた。本研究の目的は、介護老人福祉施設の利用者を対象に、通信カラオケ機器に配信されているコンテンツを用いた集団教室を実施し、運動、口腔、認知機能の維持・向上を目的とした複合型プログラムの身体機能等や意欲に対する効果について検証することである。
【方法】対象者は、介護老人福祉施設のデイサービスを利用し、本研究参加への同意が得られた11名(男性2名、女性9名)であった。介護度は、6名が要支援1・2、5名が要介護1・2であった。集団教室は、週1回の頻度で全10回実施した。60分間の教室は、アイスブレーク、下肢筋力、認知機能、口腔機能の維持・向上を狙った複合型コンテンツで構成された。教室運営には、健康運動指導士と介護職員が、機器操作とファシリテーター役として関わった。評価は、介入前、介入後、終了2カ月後に運動器症候群に関する質問票(ロコモ25)、体力、健康関連QOL、口腔機能、、認知機能について実施した。また、教室前後の気分変化を2次元気分尺度を用いて評価した。
【結果】介入前後の比較では、要支援1・2群では、SF-8の身体機能・日常役割機能・体の痛み・活力・日常役割機能(精神)で平均値の改善が見られた。要介護1・2群では、体の痛み・日常役割機能・日常役割機能(精神)で平均値の維持・改善が見られた。教室開始前・終了時の活性度平均値結果の状況は、最終回で最も高い値を示した。一方、終了2か月後の各項目の評価値は、維持されている割合が多いものの、健康関連QOLや体力に低下がみられる対象者も散見された。
【結論】以上の結果から、福祉施設に特化した通信カラオケ機器による複合型コンテンツの提供は、要支援~要介護1・2高齢者の意欲を高め、身体機能の維持に有効である。
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