宮城県の沿岸南部に位置する山元町において、平成17年より運動をきっかけとした住民や地域のつながりの強化を主眼に置いた健康づくり・介護予防事業が展開されている。東日本大震災により、甚大な被害を受けた住民の長期的な心身面の健康状態の悪化が懸念されている一方で、震災前に存在した地域活動の再開や新たな活動の誕生は生活の活発化をもたらし、良好な健康状態を保つうえで重要な役割を果たすと推察される。そこで、町民を対象に、生活不活発者の把握や震災前後の比較による高齢者の身体状況と地域との関わりの変化に関する調査・分析を行った。【方法】平成24年8月1日現在、山元町の住民基本台帳に記載のある65歳以上の高齢者(要支援・要介護認定者を除く)3,604名を対象に、生活不活発病・地域との繋がりチェックリスト(趣味活動、運動活動、老人クラブ活動、自治会や町内会などの地域活動、隣近
所との交流、地域や人と助け合う意識の全7項目)を郵送により配布、回収した。有効回答数は2413票(66.9%)であった。【結果】生活不活発該当率は40.6%(男性)、44.3%(女性)であったのに対し、後期高齢者に限ると51.9%(男性)、57.7%(女性)に上った。生活不活発該当率を運動主体の地域活動への参加状況別にみると、前期高齢者では(震災前)参加→(現在)参加:22.3%、参加→不参加:40.2%、不参加→不参加:34.6%、後期高齢者では参加→参加:38.1%、参加→不参加:51.7%、不参加→不参加:59.1%であった。趣味活動への参加状況別にみると、前期高齢者では参
加→参加:23.9%、参加→不参加:37.0%、不参加→不参加:35.0%、後期高齢者では、参加→参加:44.9%、参加→不参加:62.0%、不参加→不参加:57.3%であった。【結語】震災後の生活不活発化は男女ともに75歳以上の高齢者の過半数で見られた。震災前から運動や趣味などを主体とした地域活動に参加し、震災後に再開している人では、震災前・後で不参加の人と比べて、活発な生活を維持していた。以上から、震災前からの地域活動への参加は、被災者の生活機能維持に重要であり、災害による休止からの早期再開・新規立ち上げを支援する必要性が明らかになった。
河村孝幸、鈴木玲子