【背景】足趾把持力(FGS)は静的および動的バランス機能との関連性が指摘されており、転倒リスクを予測する体力指標として注目されているが、地域在住高齢者の報告は少ない。【目的】地域在住高齢者におけるFGSと各体力項目との関連性を明らかにすることである。【方法】2013年9月に実施されたY町おたっしゃ体力健診に参加した65歳以上の高齢者79名(平均年齢74.6±5.4歳、男性33名、女性46名)を対象とした。測定項目は、FGS、握力、長座体前屈、開眼片足立ち時間(SLS)、5m最大歩行時間、Timed Up & Go Test(TUG)の6項目とした。【結果】対象者のFGS(kg)は男性65~74歳が15.1±5.5、≧75歳で11.8±3.5、女性では、65~74歳が11.6±5.1、≧75歳で9.6±3.4であった。一元配置分散分析の結果、「男性65~74歳」と「女性≧75歳」の間で有意差が認められた。FGSと各測定項目間の単相関分析を行った結果、握力(r=0.37)、SLS(r=0.38)と正の相関、年齢(r=-0.25)、TUG(r=-0.31)と負の相関がそれぞれ有意であった(p<0.05)。さらに、年齢を制御変数として、性別毎に偏相関分析を行った結果、男性ではFGSと握力(r=0.39, p<0.05)およびSLS(r=0.52, p<0.01)の間に有意な相関が認められたが、女性ではFGSとの相関は認められなかった。【結論】特に高齢男性において、FGSは静的バランス能力に関連する体力要素であった。一方、女性においては他の体力要素との相関がみられなかったことから、FGSを含む足部機能に特化した評価およびトレーニングを行う必要性が示唆された。
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河村 孝幸、鈴木 玲子、田邊 素子、相馬 正之