栄養不足は要介護高齢者の死亡リスクを上昇させる。また、栄養不足は嚥下や咀嚼などの口腔機能と関連している。さらに、咬合は口腔機能に影響を及ぼし、栄養摂取に極めて重要な役割を果たすことが明らかとなっている。本研究の目的は、要介護高齢者におけるBMI別の臼歯咬合数と栄養不足との関連性を検討することである。日本の要介護高齢者をBMI(<20 kg/m2 vs. 20 kg/m2)に基づいて分類した。栄養不足と臼歯咬合数(左右の小臼歯と大臼歯に1つずつ、計4つ)との関連性を検討した。その結果、対象となった893名のうち、440名(49.3%)はBMI < 20 kg/m2、453名(50.7%)はBMI > 20 kg/m2であった。二項ロジスティック回帰分析の結果、BMI < 20 kg/m2は臼歯咬合数の増加と有意に関連していることが明らかになった(オッズ比:0.52-0.70、95%信頼区間:0.28-1.00)。これは、日本の介護保険施設に入所している要介護高齢者において、臼歯咬合数の減少がBMIで判定された栄養失調と関連していることを示唆する。本研究の結果は、咬合支持の維持が要介護高齢者の栄養状態の維持に役立つ可能性があることを示唆している。