論文

基本情報

氏名 渡部 芳彦
氏名(カナ) ワタナベ ヨシヒコ
氏名(英語) Watanabe Yoshihiko
所属 健康科学部 医療経営管理学科
職名 教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

題名

「被災経験の語り部」養成を通じた地域健康福祉の研究(査読あり)

単著・共著の別

単著

概要

本研究では、被災経験の語り部(べ)活動を行うグループ「福話会(ふぐわらい)」の組織化に関与し、その活動を支援しつつ調査を行ってきた。福話会の語り部活動は、そのメンバーが平成23年度の調査研究事業に関与したことに引き続き、平成24年8月に開始された。当初、人前で語ることができなかったメンバーも、様々な団体等から要請を受けて語る機会が増えることによって自信を持ち、さらに語る技術を高めることを目指すようになった。また、マスコミの取材を受ける経験は、メンバーに「達成感」や「やり甲斐」をもたらした。さらに、計量テキスト分析等に基づく聴衆の反応の分析は、語りの手法を対象に合わせて柔軟に変えることにもつながったと考えられる。
 近年は、各地の語り部団体が情報を交換するネットワークを形成し、そのようなネットワークに関与することを通して、さらなる技術の向上と役割意識の醸成が図られていると考えられた。一方、語り部の聴衆の反応からは、語りを「聴く」という行為が、被災の擬似体験・擬似追体験として作用していると考えられた。
 福話会では、被災経験を語ると同時に、被災者の手記を集めた「震災の記憶」第1〜3集を編集した。この手記を寄せた人の中の数人に対してインタビューを実施したところ、文面には表現されていない複雑な背景があることが明るみとなり、今後の編集活動の参考となった。
 福話会のメンバーには、この5年間の活動を通じて少しずつ心の癒しがもたらされている。今後の活動の継続を考えた時に、語り部は多様な伝承手段の一つとして、生の声を発信し続けることにより、本人の癒しはもとより、地域の健康福祉にも資すると考えられた。
199-212

発表雑誌等の名称

東北福祉大学感性福祉研究所年報 第18号

発行又は発表の年月

201703