東日本大震災の被災経験を伝えるために、大学で開催した福話会の教室展示と語りのイベントで、その展示物を見たり、語りを聴いた人から得られたコメントを、KH Coderを用いて計量テキスト分析によって検討した。コメントは182人から得られ、出現頻度が多かった語は「思う」88回、「見る」54回、「震災」51回、「津波」50回、「感じる」46回などであった。抽出された語を共起ネットワークで図示した結果、教室内に展示した写真や被災財(アルバム、看板)等に言及するコメントが多く寄せられていると考えられた。また、それらの語のまとまり(サブグラフ)の中で、被災者の話しを聞いたこと等にも触れられ、「初めて」目にしたり聞いたりした驚きが示されていた。また、他のサブグラフの中では、早期復興への思いや、被災者の生の声を聞いた心の痛み、時間経過とともに記憶が薄れ行くこと、貴重な機会となったことへの感謝等が見出された。さらに、対応分析の結果、属性(学生、一般)の違いによって用いられる頻度に相違が見られる語があり、学生は、語り部の話しを聞いてコメントを書くよりも、展示物を見て印象を受けたことを書いていると考えられた。このような分析により、聴衆のコメントの全体像を客観的に把握でき、今後の活動に活用できると考えられた。
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