法学や法制度の諸概念からもれ落ちていく感情,情動に焦点をあて「特養あずみの里業務上過失致死被告事件の控訴審判決」を参照して,法社会学的な視点から考察をした結果、被告人とされた看護職員の「感情」,施設職員の「感情」,73万筆超える無罪要請署名と無罪判決宣告後も上告断念を求める要請活動を展開した4,500の団体の支援という悲嘆への「感情」が裁判官の心証形成に少なからず影響を及ぼし,当事者の感情,悲嘆への感情と支持,感情の表出の場として司法システムが道徳的課題の克服の場へと変容してきている点を示した.また,この事案の分析を通じて職員間でフィードバックすることによって,職員間の専門性の向上,質が高い効率的なサービスの提供につなげ,そして最終的に介護事故の防止にも役立てることが必要あることを見出した.