出演した俳優の有罪判決を理由に映画への助成金を不交付にしたことに対して、最高裁は、不交付処分の取り消し判決を出した(最高裁判所令和5年11月17日判決)。近年の司法統計年報によると、最高裁で「上告申立」で高裁の判決が「破棄」される件数は、近年ではわずか紛争全体の1%程度にも関わらず、逆転勝訴判決の要因は何か。この点、科学的なデータや数値、論理的思考では答えを導くことができない事案について、アートが育む感性や直感を頼りにした方がよいと仮説を設定した。本報告では、第一に歴史的な考察として、アートが法にどのように取り込まれたのか歴史的背景を概観する。第二にアートの本質が本事例を踏まえて、裁判官の心証形成にどのような影響を与えたのかを考察する。第三にアートの視点がリスクマネジメントと法の観点からどのような意義を有するのかを明らかにした。