本事業は、介護従事者の認知症介護に関する基本的知識の向上と介護の質の向上を促進するため、eラーニングによる認知症介護基礎研修の学習効果を検証し、学習内容および評価手法の検討によって認知症介護の基礎を効果的に学習するためのeラーニングシステムの開発を目的とした。
【実施期間】令和5年7月~令和6年3月
【対象者】 研修実施自治体68か所中、仙台センターを指定団体とする52自治体(令和5年3月31日時点)において、令和3年4月から令和5年3月までに認知症介護基礎研修eラーニングを修了した者44,725名のうち、学習履歴データの研究活用について同意していただいた38自治体における研修修了者24,399名の学習前後における確認テストの解答データを対象とした。
【結果】
1.総合得点の変化
対象者24,399名の学習前後における平均得点を比較すると、学習前の平均得点は14.02点(SD2.33)/20点、学習後の平均得点は16.19点(SD2.40)/20点と学習後に有意に得点が上昇していた((t(24398)=-121.527, p< .001))。
2.学習内容別の学習効果
24分類の学習内容中、「大綱の理念」「パーソンセンタードケアの考え方」「意思決定支援の考え方」「認知症の基本」「レビー小体型認知症の原因と症状」「前頭側頭型認知症の原因と症状」「内的世界を踏まえたコミュニケーション」では学習後の正答者割合が増加し、学習効果が顕著であった。「中核症状の特徴」「BPSDの考え方」「意思決定支援の方法」「中核症状とコミュニケーション」では正答者割合の増加が微増であった。その他の学習内容では、学習前の正答者割合が7割以上を占めており、学習者の理解度に応じた個別学習の必要性が示唆された。
【結論と今後の方向性】
認知症介護の基礎知識に関するeラーニングの学習効果はおおよそ有効であることが示唆されたが、顕著な効果が見られない学習内容も確認され、効果的な教材構成やテスト問題の妥当性に関する検証が必要であることが明らかとなった。また、難易度を統一したテスト問題の標準化、効果的な学習コンテンツの再検討、個別学習に向けたアダプテッドラーニング化等の必要性が示唆された。