中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」は大学教育に大きな影響を及ぼしている。学士力の学習は、かつての「教養教育」のように「学士力課程」などのような「課程」として行われるのではなく、「専門教育」に学士力の修得という要素が含まれるとされている。学士力のなかでは「汎用的技能」が重要な要素として議論されるが、「汎用的技能」は分野横断的な学習成果として想定され、分野横断的に専門分野の教育の中で修得されるものとされている。しかし専門分野ごとの卒業生の進路先は異なり、また特定の業界などを進路として想定している分野もあり、進路先で有用な人材として活躍することを念頭に置いた教育が行われる分野も想定される。本稿では、大学ポートレートの情報を分析することにより、専門分野による卒業後の進路の集中度に違いがあることを示し、進路の差異をもとに「専門の教育」を通して培われる「汎用的技能・知識」は汎用的であるかについて考察を行った。
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