中教審「学士課程教育の構築に向けて」の、「各専攻分野を通じて培う「学士力」〜学士課程共通の「学習成果」に関する参考指針〜」では、学士課程教育は①知識・理解、②汎用的能力、③態度・指向性、④総合的な学習経験と創造的思考力を身につけること目的として掲げている。つまり学士課程教育では、研究が行われている専門分野の知識をベースにしながら、それらの知識とは出所の違う教育成果も求められている状況に置かれている、と考えられる。
学部・学科によって、卒業生の多くが特定の職種につく「専門職育成」分野や、職業との関連の薄い分野もある。そのように職業との関係性において教育内容もさまざまに異なる各専門分野の教育で、学士力として提示されている能力は、どのように教育内容に取り入れているのかについてテキストマイニングを用いて分析を行った。
Webで公開されている国立大学の大学ポートレートの進路先情報と、学部ごとの「教育目的」と、「アドミッション、カリキュラム、ディプロマポリシー」をデータとして使用した。このテキストの中に、中教審答申の「学士力」の「知識・理解、汎用的技能、態度・志向性、統合的な学習経験と創造的思考力」の4つの項目の解説に使用されている単語とその類似語を抽出(上位3つ)することで、どのような文脈で「学士力」の解説に用いられている単語が用いられているのかの特定を試みた。
進路先データから、進学者が多い分野、特定の職種へ就職している分野、就職先が同一産業に集中している分野があることがわかった。進路と学士力の関係については、同一職種への就職の多い教育系と生物系で「態度・志向性」を説明する単語が他の分野より多い傾向が見られた。このことを進路先の集中度との関連から解釈すると、教員養成を含む教育系や、医歯薬学を含む生物系では、進路先を具体的に想定できることから、必要とされる態度・志向性に関する語彙が使用されているのではないかと推測される。
pp88-89