日本の高等教育に職業教育的な意義をあまり認めない傾向は、OJTによる職業的スキルの習得や、ホワイトカラーの職場とブルーカラーの職場の双方に異動する可能性がある日本的な会社の特性などから指摘されているが、社会福祉士養成課程に入学した学生の調査からも、米英と比較し動機意識が低いことが指摘されている。また高等教育へ進学率が上昇している現状の中、看護師養系の学科と比較し、社会福祉士養成系の学科は入試得点率が低く、標準偏差が大きい傾向が見られる。この傾向により、これまで高等教育に入学してこなかったような得点層の受け皿の一つとして、社会福祉士養成課程が機能している可能性がある。低い社会階層出身の学生に関する教育社会学の研究では、勉強しないことが自らの有能観を高めるという、勉強する事への価値を捨象する傾向が明らかになっている。このような傾向の中、「社会福祉教育の目的がソーシャルワーカー養成にあるとすれば、社会福祉士国家試験に合格することができる実力を養い、その結果として社会福祉資格取得という目的を達成することができるという道筋を理解させることが課題」という考え方で、資格取得がカリキュラムの大きなウェイトを占めるようになっている。つまり入学してくる学生の中には、入試の得点率の低く、また社会福祉についての動機が希薄で、さらに教育の職業的意義も低く認識しているような学生が含まれると考えられ、そのような学生にとっては「資格取得に役立つ・役立たない」ということのみが、大学の授業を受講する基準と可能性があると考えらる。
Web(http://www.jssw.jp/conf/63/pdf/A35-3.pdf)