2015年の介護保険法の改正で特別養護老人ホームは,在宅生活困難者を支える機能へと重点化がすすめられた.その為,入所基準は原則要介護3以上となり,特別養護老人ホームの重度化が更に加速する結果となった.我々は,重度化する特別養護老人ホームを始めとした高齢者福祉施設で,多職種連携のもと,ひとり一人の高齢者に車椅子を適合させる過程を通して,生活課題の発見と解決を行う「車椅子適合支援」を10年以上にわたり実施してきた.しかし,現状の車椅子の多くは,高齢者の身体寸法・身体機能・使用目的に適合していない.そこで我々は,高齢者福祉施設特化型車椅子PS・1(Posture Solution Ver.1以下,PS・1)を開発(2015年商品化)し,臨床導入・評価を繰り返し実施してきた.その結果,生活の大幅な改善等がみられることがわかった一方で,前座高,座幅,パット形状,片麻痺利用者への対応等の課題が明らかとなった.また,PS・1は,デザイン性には優れているが,量産には不向きな機構となっている.そこで,本研究ではPS・1導入事例から見えてきた課題を踏まえて,量産可能な新型モデルの開発を行うことを目的とする.
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