2015年の介護保険法の改正では，地域包括ケアシステム（住み慣れた地域での生活支援を一体的に提供する仕組み）の構築に向けた更なる取り組みとして，特別養護老人ホーム（以下，特養）を，在宅生活困難者を支える機能へと重点化された．その為，入所基準は原則要介護3以上となり，特養の重度化が更に加速する結果となった．我々は，重度化する特養を始めとした高齢者福祉施設（以下，施設）で，多職種連携のもと，ひとり一人の高齢者に車椅子を適合させる過程を通して，生活課題の発見と解決を行う「車椅子適合支援」を10年以上にわたり実施してきた．しかし，現状の車椅子の多くは，高齢者の身体寸法・身体機能・使用目的に適合していない．そこで我々は，震災後の2011年から高齢者向けの車椅子の試作を行い，複数施設での臨床評価を重ね2015年度に高齢者福祉施設特化型車椅子PS-1（Posture Solution Ver.1以下，PS-1）として製品化に至った．
前回（第二報）は，重度化が進む施設利用者の最近の主な身体的な特徴と，そこから見えてきたPS-1を用いた車椅子適合支援の課題（主にPS-1本体のハード面）について報告した．
今回は，76名中“導入契約”に至った59名の車椅子適合支援（臨床介入）結果を踏まえ，そこから見えてきた最近の利用者の特徴や座位保持能力と生活改善等の効果について報告する．
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