2017年に調査研究で渡航したベトナム北部のタインホア省における結果をまとめたものである。
これまでに研究・発表されている医学・化学分野に比べて研究が進んでいない「社会経済的な研究」に重点を置き、ベトナムの現地インタビューに基づく「枯葉剤被害者」の実情から問題点および課題を明らかにした。現地に赴き、被害者本人および生活を共にし介護にも携わっている家族への対面インタビューの内容を分析し、社会経済的な支援体制がいかに立ち遅れているかを明らかにした上で今後の大きな課題であることで示した。特に「女性の視点」に関わる部分を担当し、女性ゆえに担ってきた過酷な役割や、障害児の妊娠出産を通して経験するに至った母親としての精神的肉体的苦痛などに焦点を当て、定性的な調査分析結果として問題点を提示した。障害児や障害者を家族に持つことで、家事全般を任されている女性に降り掛かる負担には想像を絶するものがあるが、その程度の差異によって経済的支援を適応させるなどの機能は一切ない。また、障害児を妊娠出産した母親に対しては、子供の生育に関するサポートはもちろんのこと、本人の精神的および肉体的な面をケアする社会福祉的支援が必要であり、組織的な対応を早急に行うべき状況であることが明らかになった。
生田目学文、石野莞司、桑原真弓、野崎明、北村元