釈明(account)とは負事象との関連が社会的に問われた際、それについて行為者自身が行う説明行為で、釈明が被害者から受容されれば、加害者は排斥などの社会的罰を免れることができる。本研究では、被害者が釈明を受容するのはどのようなときか、謝罪に焦点を当て比較文化の文脈で検討した。日本・中国・米国すべてにおいて謝罪は非謝罪(正当化)よりも明らかに受容された。過去の研究では(大渕, 2010)、個人主義文化圏では集団主義文化圏よりも相対的に正当化が好まれるという知見もあったが、本研究ではどの国においても謝罪受容が顕著だった。また、これが被害回復知覚によって媒介されていることも共通に見出された。物質的・利便的被害回復だけでなく、自尊心や信用など象徴的被害回復、また社会規範の再確認など心理社会的関心も釈明受容を規定していることが示唆された。
pp.52-37
大渕憲一、山本雄大、謝暁静、渥美惠美