釈明需要に対する被害回復知覚の効果:比較文化研究というテーマでポスター発表を行った。本研究では、加害者からの釈明を被害者が受容するかどうかは、釈明が被害回復を期待させるかどうかに依存すると仮定し、正当化よりも謝罪が受容されやすいのは、謝罪を受けた被害者が正当化を受けた被害者よりも自己利益や象徴的被害(自尊心毀損)の回復を強く期待し、また社会規範再確認を強く知覚するためであろうと予測した。この仮説を比較文化的文脈において検証するために、Webによる役割演技実験によって日本、中国、米国の参加者496名に被害エピソードを与え、①彼らが加害者からの謝罪あるいは正当化を受容するかどうか、②これらの釈明に対して3種類の被害回復知覚をどれくらい強く知覚するかを測定した。結果は我々の仮説と一致しており、どの国の参加者も正当化よりも謝罪をより受容し、このとき3種類の被害回復をより強く知覚した。また、どの国においても、釈明受容はこれら3種類の被害回復知覚によって媒介されていた。自己利益の回復よりも象徴的被害回復や社会的規範再確認の媒介効果が大きかったことは、被害者にとって自尊心や社会的価値の回復に重要な関心事であることを示唆している。
大渕憲一 渥美惠美