近年、企業福祉の分野では共済会の設立や制度の見直しが顕著に行われ、その動向が注目されている。本テーマについては2009年にその歴史的展開からその最新事情までを本誌論壇で取り上げ、社会保障との関係性を分析しながら社会保障と企業福祉の連動性と企業における労使関係の変容を指摘した。本稿では、企業福祉の合理的な運用を目的として1970年代後半に設立がみられるようになった企業内における「総合福祉福祉センター」が、1980年代から1990年代にわたって急速に増加し、その後、企業および労働組合を取り巻く環境変化の中で企業福祉の運用に新たな手法が採用される背景とその原理を捉えたうえで、さらにグループ企業を取り込み大型化した企業内共済制度の「今」と今後の展開の方向性を「総合福祉センター」の展開を見つめる中で今後の展望を論じたものである。そこにはカフェテリア化、アウトソーシング化という運用方法の導入、さらに「自立」と「自己責任」の原則を貫いた「自助努力」の強調が指摘できる。しかし、基本的にはそこに「福祉と効率の両立」というシステムとしての進化があったことを大前提に「自立と連帯」という考え方の原点があったことが重要であり、マネジメント志向の重要性が注目される一方で、考え方の再度の点検とともに理念の再構築が組織の今後を左右していく可能性を論じている。
pp.48-53
