本稿は、ニコラス・バーによって著された『福士の経済学―21世紀の年金・医療・失業・介護』を日本を代表する若き研究者たちが翻訳したものである。立教大学経済学部の菅沼隆氏監修による翻訳は、氏の隅々にまでわたる丹念な読み込みと各翻訳者へのコメントを通じて極めて丁寧なものとなっている。バーは、経済学の手法によって福祉を検証していくと、福祉国家の存在は今後も重要な意味を持ち、その後退は資本主義経済の後退をも意味することから現、現実的な意味からも福祉国家をまずあり方は有効であることを論証している。この翻訳が、今日の我が国の社会保障後退に警鐘を鳴らすものであるという視点から、きわめて示唆的であることを書評としてまとめた。
pp.37-40