企業におけるリスクマネジメントの問題が注目されている。経営環境は年々不透明さを増し、外的環境の変化とともに内的環境変化にも十分な配慮が求められている。近年発生している企業の不祥事問題は利益確保に必死であったがゆえに生じる一方で、内部告発による発覚が多くを占める。問題の温床となる要因を分析していくと、そこには企業組織を構成する従業員らへの配慮不足が垣間見られる。本稿は労働条件の悪化、経営者と従業員との間に限らず従業員同士でもコミュニケーションが断絶、もしくは不足する傾向から、問題発見の遅れ、あるいは企業への信頼感の低下などがもたらされる人的資源管理の失敗を確認し、それらに削減が続いている企業内福祉が寄与してきた点を指摘する。多面的な機能を持つ企業内福祉を「リスク回避手段」という側面から整理することを試みた。
pp.21-26