複雑に変貌していく現場の問題を解決していくためには何が必要か。本論文は、労働組合の役割と一つの在り方として、常にそれらの問題の答えが「現場」にあることに言及している。時代の大きな動き、それは環境変化となって組織に「適応」を求めてくる。その適応過程では、時に本来の目的や役割、あるべき姿や在り方に戸惑いが生じ、逸脱も生まれてくる。もちろん、それが近視眼的な利益を求めての判断になりやすいことは多くの試行錯誤や失敗の中で学んできたことだった。すぐに答えを求めようとし、それも「正解」を求めようともするが、そこにはアイディアが生まれず、知恵がもたらされない。「環境」というマクロの問題が、組合員一人ひとりの心のうちというミクロの問題に影響を与えることを考えてみれば、「現場」に働く組合員のもとに出かけ、そこでの話し合い、コミュニケーションが常に「ヒント」をもたらしてくれることは「中範囲の理論」から得られる利益である。大きな時代の流れの中にある今、うろたえず、現場で観察する目とコミュニケーションによって本音を聞き出す耳を持ち、多くの組合員に届く言葉をもって伝えていく力が必要になってくると考えられる。少なくとも「流されてはならない」という問題意識を持ち、自らの問題意識の原点はどこにあるのかを問うことの重要性を整理した。そこには歴史があり、時代があるが、その積み重ねの上にアイディアが生まれてきたことを知る必要がある点を指摘した。