組織の中の人間行動と生み出される社会問題

労働開発研究会 『労働と経済』№1690

本論文は、中古車販売の「ビックモーター」の事件を取り上げ、そこに見え隠れする「組織悪」という問題に注目したものである。「組織悪」は、アメリカの組織心理学において、NASAにおけるロケットの打ち上げ失敗が「NASAという組織に潜む悪」に原因があるとの研究によって注目されたが、そこに存在した「意思決定過程における欠陥」を検討した。組織に所属する各々の構成員の小さな責任逃れや判断ミス、不作為が積み重なって、組織はもちろん社会にも大きな悪影響を及ぼしたとする研究である。ここではビックモーターの事件を取り上げたが、実は「我々の身近な問題」であるとの指摘から検討を試みたものである。「責任逃れや判断ミス、不作為」に関しては、近年、指摘されている「PFOS」や「PFAS]などの有機フッ素化合物の問題を取り上げ、日常的に飲み、農作物にも与える「水」の問題から考察した。ここにおいて「組織の中の人間行動」が「社会問題」をも生み出す危険性を考察した。しかし、それは特別のことではなく、多くの「現場」においてこの問題を見て見ぬふりをする働く現場の問題点に接近した。