その他

基本情報

氏名 園田 洋一
氏名(カナ) ソノダ ヨウイチ
氏名(英語) Sonoda Yoichi
所属 総合マネジメント学部 産業福祉マネジメント学科
職名 教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

タイトル・テーマ

企業における福利厚生施策の展開と今後の取り組み向けて

単著・共著の別

単著

発行又は発表の年月

202303

発表学会等の名称

産労総合研究所『賃金事情』№2865

概要

本稿は、企業における福利厚生施策の展開と今後の取り組み向けて論じたものである。企業における福利厚生施策は、経営管理の中における人的資源管理のサブシステムとして機能してきた。その基本は、人材の確保・定着であり、従業員生活の安定と向上を通じた「生産性の向上」にあると言える。もちろん、労使関係の安定や企業における社会的責任の側面などがあることは言うまでもないが、企業が「人」の活用を通じて動いていることを捉えれば、その重要性は企業経営にとって最重要なものとなっていることは間違いない。
近年、「人的資本経営」という考え方のもとに、「健康経営」が叫ばれ、労働経済学のみならず、経営学の最先端の取り組みとしての企業活動に注目が集まっている。もちろん、そこに若年労働力人口の減少があることはもちろん、コロナ後の経済回復の中での人手不足や働き方改革の中での労働時間の短縮など、特に運輸関係でのドライバー不足やIT・AI分野をはじめとする成長産業での人材不足などに見られる「人材確保の問題」が深刻化している中で、その対応策としての福利厚生の動向には、経営管理・陰的資源管理上の組織課題として特に注目を集めている。
本稿は、歴史が古く、わが国を代表する人事労務管理資料である『賃金事情』(産労総合研究所)において、本課題であるわが国における企業での福利厚生施策の歴史過程、そこでの経営環境と従業員の生活環境の変化に対応した「環境適応過程での運営管理原則の変容」を捉え、今日的現状の特質を明らかにした。それは、経済のサービス化に伴う「モノ」から「コト」への自助努力支援を特徴としており、コスト管理の徹底をさらに進めていこうとする「外部化」を加速させている点に特徴がある。それは、企業独自の創意工夫の一方での後退であり、標準化という傾向を持ち、企業が各々にもっている経営文化や経営思想、あるいは労務構成に適応させた独特の知恵を積み上げる作業をやめ、企業の重要な知識・情報の蓄積過程を放棄するものであると問題点を指摘している。それは、「経済合理性」を最優先課題とする中での帰結とも言えるが、問題は企業内部が抱える個別事情への対応能力の低下であり、経営組織におけるパフォーマンスの低下につながる可能性を論じた。