わが国の「少子化対策」は、およそ30年も前からの研究者らによる警告にもかかわらず進んでこなかった。その意味では、政府および行政の怠慢であることは間違いない。そして今、「異次元的少子化対策」と呼ばれる対策を打ち出す政府の施策もまた財政的裏付けも明確ではないだけでなく、過去においても実効性に疑問が残り、資金の無駄遣いになる可能性があることを繰り返している点を述べた。これまでの少子化対策は、「少子化」を近視眼的にとらえ、小手先の対策に終始してきたとも言えるが、そこには、社会経済の在り方に対する認識の低さと根本的な現実とのズレがある政策を継続していることによる問題があったように思われる。特に「日本の人口を維持・増加させる」という点において無理があり、むしろ「いかに少子社会にソフトランディングしていくか」に視点を据え変え、現実の社会に対応した施策のの在り方に転換する必要性を論じた。