本稿では、近年における「情報過多」に伴うあらゆる場面での「判断の錯綜」に注目した。フェイクニュースは言うに及ばず、近年、情報手段の多様化や革新的技術の広がりによるそのスピードの速さが、世界的なレベルでの「変容」をもたらしている点を指摘し、「事実関係」の把握はもちろん、それらの情報における「受け止め方」に留意する必要があることを論じた。これは国際政治や世界経済の問題は言うまでもなく、企業における経営判断、また労使間での合意に向けた交渉過程での認識のすり合わせにも影響するものと考えられ、「不適切な情報」を重要な判断に取り入れることの危険性と、そうした事態の可能性を我々が常に持ち合わせている点に着目した。それは、企業経営においても、さらにそこに働く従業員や労働組合における日常的判断にも影響を与えているのであり、「情報認識」に対する今一度の検討が必要であると指摘している。