その他

基本情報

氏名 園田 洋一
氏名(カナ) ソノダ ヨウイチ
氏名(英語) Sonoda Yoichi
所属 総合マネジメント学部 産業福祉マネジメント学科
職名 教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

タイトル・テーマ

福利厚生の経年変化を明らかにする統計データの重要性

単著・共著の別

単著

発行又は発表の年月

202211

発表学会等の名称

労働開発研究会『労働と経済』№1680

概要

本稿は、日本経団連(日本経済団体連合会)が1956年より実施してきた「福利厚生費調査」について論じたものである。日本経団連は、この調査を2019年度調査をもって最後とし、終了することを決定した。わが国の大手企業が負担してきた福利厚生費用の経年的な動向データは他に類がなく、厚生労働者の「就労条件基本調査」や財務省の「法人統計」などにおいて調査されている部分的な調査とは異なり、費用面から企業が取り組む福利厚生施策の動向を捉えるにあたっての貴重な調査であった。近年、このような調査や研究が次々と廃止され、様々な企業施策の動向を裏付ける統計がなくなってきている。全体の動向を捉えることは、そのトレンドばかりではなく、施策で先行する企業の取り組みを後発の企業が目標として自らの立ち位置を確認する上で重要な指標ともなってきた。確かに調査には莫大な費用と手間がかかり、また調査に協力し回答する企業の負担も重かったことは事実である。企業内の効率化の進展は、これらのデータを提供するにあたってのスタッフ負担を顧みて、回答を辞退する例も増えてきていた。日本経団連さえ、会員企業の中から「協力辞退」が出てきていると考えると、一つの時代の転機を迎えていると言える。
しかし、重要な指標となっていた本調査が行われなくなったことによる影響は決して小さなものではないと考えられる。むしろ、経営データの重要なものの一つを失い、労使間交渉において貴重な指標材料となっていたがゆえに、その質が落ちていくことは必須と思われる。近年、人事労務関係業務を外注化する動きが顕著となってきている。その外注先による分析に従い、福利厚生においても時代のトレンドを捉えた施策展開ができるという営業トークに乗って「システムの導入」に踏み切る企業が増加しているのである。しかし、福利厚生施策の運用の中から「社員の目に見えない課題」を発見してきた現場の歴史を考えると、その選択は「データ蓄積の不在」とともに、「事例蓄積の不在」というリスクを引き受けることになるてんを指摘した。それは、経年データによる自社の動向を検討するにあたって重要だったとした。