その他

基本情報

氏名 園田 洋一
氏名(カナ) ソノダ ヨウイチ
氏名(英語) Sonoda Yoichi
所属 総合マネジメント学部 産業福祉マネジメント学科
職名 教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

タイトル・テーマ

「着実」を裏切る風景が未来を見えにくくする時代

単著・共著の別

単著

発行又は発表の年月

202209

発表学会等の名称

労働開発研究会『労働と経済』№1678

概要

日本的雇用慣行の崩壊が叫ばれて久しい。特に1990年代初頭におけるバブル経済の崩壊は、経済の急速な悪化を背景に雇用環境を不透明なものとし、企業も「リストラ」による生き残りを必死で模索する時代に入っていった。同時に日本経済を支えてきた企業の年功序列型処遇にもメスを入れる企業が現れ、1990年代中盤からは「意識の多様化」をも理由に自己選択・自己責任の考え方をもとに「組織の中で生きる在り方」を「自ら選ぶ」というシステム転換を図りながら成果主義、能力主義の色彩を強めていく人的資源管理が行われるようになってきた。すなわち、企業の中で定年まで働き続けることを前提に、職務に没頭し、自らの能力の向上に懸命となる従業員の養成を自己責任へと転換したことで、これまで従業員のモチベーションの維持を「着実」という視点から「パフォーマンスの発揮」という視点に変える大きな転換を図ることになったと思われる。問題は、階段を上るようにして仕事を覚え、職業人として成長する在り方を育む環境に変化がもたらされ、それらをサポートするように組み立てられてきた人事労務施策が効果面で動揺する現象が生じてきた点である。能力主義を強めていくことで成果を上げた部下が上司を役職の上でも越えていくことが生じることはもちろん、若年者が年上の先輩を部下にもつ中での人間関係のもちように関係性の再構築が必要となることで、年功序列、年功賃金、終身雇用などが見直されるようになってきた。もちろん、これらが企業組織における忠誠心、愛社精神といったパフォーマンスの源泉に変化を与えてきたことは言うまでもなく、雇用の流動性を高めることになってきた点は重要な問題だともいえるようになってきた。本稿はこれらの点について分析を行い、結論の一つとして、働く若年層のモチベーションの維持・向上に陰りをもたらす「未来を見えにくくする時代」を迎えている点について憂慮するものと指摘している。