大学生の就職活動が注目されている。若年労働力人口の減少と大量の高齢退職者の増加、医療や介護、またIT産業などの分野における人手不足が求人倍率を押し上げている。また一方で優秀な人材の確保に動いている企業の採用意欲が旺盛なためである。売り手市場になっている中で大学生の企業を見る目は厳しくなり、ブラック企業を選ばないような注意深さも目立ってきている。その中で「働きがいのある仕事」や「労働条件の良い企業」の選択基準に「充実した福利厚生」があげられるようになってきた。本稿はその動向を捉え、企業、または労働組合が力点を置くべき企業内労働環境の問題への視点について改めて検討してみたものである。基本的にコスト面での課題を抱えながら、しかし企業を動かしていく人材の不足は重要な経営問題であり、いかに「費用を抑制しながら充実した福利厚生」を実現していくかに目を向けることの意義を論じた。たとえ小さなことでも「気のきいた配慮」が求められる時代を背景に、それが企業労使にとって戦略として捉えられるべき時代がきており、そこに革新が生まれつつあることを指摘した。
pp.32-33