「第2の賃金」と呼ばれる福利厚生の問題は、賃金に比べてあまり問題にされない。それは「労働力の対価」としての賃金に対して「雇用されていることを前提に適用」されるものであるが、「現金給付」「現物給付」および「サービス」という形で給付され、従業員生活を厚くすることに大きく貢献しているにもかかわらずである。労働組合の多くが「賃上げ」を中心に労働条件の改善を求める運動に力を注いできたことは重要であることはいうまでもない。しかし今日、「組合員への実質的生活メリットの向上」を目指す場合には、改めて福利厚生に注目することが必要ではないかとの問題提起をしている。本稿は、近年における若年労働力人口の減少を背景に、優秀な人材を確保したいと考える企業の福利厚生への見方が次第に変化していくであろうことを論じている。2015年12月18日に日本経済団体連合会が発表した「2014年度福利厚生費調査結果」からその費用の動向をひきつつ、負担が増大する一方で幅広い制度の内容がワークライフバランスを求める世代にとっては重要な意味を持つ点を指摘した。そこでは労働組合がこれらを重視し、実質賃金の向上を視野に入れて取り組むこと、そして今一つの課題としての非正規従業員への福利厚生の適用問題に目を向けることが必要であることを述べた。
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