2000(平成12)年4月から施行された公的介護保険が15年目を迎えた。それはそれ以前の「措置制度」から「社会保険制度」へとシステムが大きく転換したことを意味し、今後迎えるであろう超高齢社会における介護問題に国としてもしっかりと対応していこうとするものであった。いわゆる「介護の社会化」を目指した制度であった。本稿は、筆者がドイツ介護保険の生成過程を現地調査していた時代の過去を振り返りながら、ドイツの介護保険を範に取った日本の制度生成の裏舞台と懸念されていた問題を論じるとともに、予想以上に増える介護保険利用者と介護問題を抱える国民の増加がもたらす様々な問題を指摘した。その中でこの問題が企業の従業員の問題、すなわち企業の人的資源管理の問題として極めて大きな課題となる「介護クライシス」をもたらす点に目を向けるべきであることを論じている。
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