本稿では、近年における学生気質の変化を取り上げながら、その背景にアルバイト先での働き方の問題があることを指摘している。それは正規従業員と同等かそれ以上の仕事をさせながら、賃金としては極めて低い水準の支払いにしかしていない実態に接近している。そこには売り上げの低迷を人件費の削減によってカバーしようとする企業経営者の在り方が垣間見られ、その絡繰りを学生の話から読み取る形で論じた。結果的に、学生が実質的な生活困窮の状態に追い込まれている点を問題にし批判をした。一方で国による教育投資不足は深刻で、先進国中で最も低いレベルにある。国にとって若者は「未来」であるが、「ブラックバイト」と呼ばれるアルバイトを放置している点に社会問題としての深刻さがある。国が連呼してきた「加速化」は、悪化の世界の話である。
pp.30-32