本稿は、労働組合の「役立ちどころ」はどこにあるのかを考察している。企業内での問題は言うまでもなく、働く者の労働や暮らしを守る見地から国家的政策に対する問題意識を持つこと、またその問題点と労働組合として批判的立場から今起こっていることの事実を見定めることの重要性を指摘した。今日、国の政策の数々は「国の形」を変えていくことを中心的課題とし、それに多くの批判がなされているものの、「不都合な真実」から国民の目をそらそうとする動きが顕著である。それは国民である組合員とその家族の労働と暮らし向きを悪化させるものとなっている。政府が大企業に賃金を引き上げるよう要求した点については、一時的なパフォーマンスに過ぎないことは言うまでもないが、そこに経営者の責任が見えてくることに注目した。
pp.34-35