本稿は、東京オリンピック誘致の際の世界向けスピーチで安倍首相が東京電力福島第一原発事故の不安を払拭するために「福島はコントロールされている」と事実とは異なった発言をしたことを始め、経済政策などの失敗によって生じている様々な問題に「わかりやすい説明」ではなく、「わかりにくい説明」、むしろ「わからないようにする説明」を続けている諸問題にも問題意識を広げ、思惟的に「錯誤」へと誘導しているのではないかと指摘されている点について考察した。経済政策、安全保障政策においても極めて高いリスクを伴う問題について誤魔化しの説明が行われている延長線上に、越えてはならない一線としての「歯止め」が資本の論理、政権の論理で外されている事実を分析した。
pp.32-35