アメリカの社会病理については古くから知られている。経済発展を中心その姿を追い続けてきたわが国は、社会病理までをもアメリカに追随しようとしているのである。経済的格差による貧困問題は「持てる者」と「持たざる者」との間の格差問題であるが、その差は広がり続けている。社会に根深い不満や不満があるとエーリッヒ・フロムが描き出した様々な社会問題も生じてくる。日本もここわずかの間に経済格差が拡大し、問題が深刻化してきている。そこに産業競争力会議のホワイトカラー・エグゼンプションという問題的が登場してきている。日本の政治が進めている政策は、経済の活性化を推し進める一方でもたらされる「負の部分」をわざと無視しており、その無謀は「苦悩するアメリカ」の風景に重なることを論じている。
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