「新しいリスク」

共文社 『労働と経済』 1532号

わが国は先進国の1つとして安定した経済成長のもと、豊かな社会を築こうとしてきた。オイルショック以降、不況の中でも急速な技術革新や減量経営が展開され、苦難を乗り越えてきた。その後、急速な少子高齢化や経済のグローバル化のもとで社会の成熟化が進展してきたが、その中で我々は多くの「新しいリスク」に遭遇するようになってきた。個人の問題としてみれば、就学期を経て就職し、結婚し、子どもを持ち、教育をしながら持家に努め、子どもが学校を出た後には自分たちが老後生活を迎える。一般的なライフサイクルはそうであった。しかし、学校は出たものの就職できない、しないという問題が生じ、またすぐに退職してしまう例が増えてきた。結婚をしない、子どもを持たない、持家をしない、老後生活は伸びるが核家族化によって子どもたちが支えてくれるとは限らなくなってきた。もちろん離婚があり、これまでにない不慮の事故なども過去に比べて増えてきた。すなわち、我々はリスク社会の中でさらに次々と発生してくる「新たなリスク」に備えなければならず、労働組合は働く者の生活への配慮としてこれらをも視野に入れての活動が求められる点を論じた。
pp.18-19