円高が続く中で輸出産業の苦境が報道されている。製造業は中国や韓国などの新興国の追い上げから国際競争力を低下させ、大企業ばかりでなく、中小企業においても海外に生産拠点を移す傾向が続いている。もちろん、技術の獲得を目指した企業買収も進み、日本企業が中国などの企業の資本傘下に入ることも進み、わが国の経済は製造業を土台とした経済からサービス経済化が進んでいる。大手製造業のリストラは、単に従業員の削減ばかりでなく、子会社や関連会社をつくりながら生き残りの道を模索している。その過程は、労働組合にとっては労働組合の衰退に繋がる大きな問題であり、新たに設立されてくる企業に労働組合がつくられないことによる組合の組織率低下は、働く者にとって不利な条件を飲まざるを得ない環境が次第に広がっていく。それはすでに非正規労働者の増加によって弱体化の道を歩んできたと言えるが、職場の労働問題の解決が滞る可能性は、企業経営にとっても課題を抱えることになる点を指摘した。
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