経済面における国と国との境目がなくなる時代がやってきた。少なくとも情報技術の飛躍的な革新によって瞬時に情報や資金が世界を駆け巡る時代が到来し、その中で企業活動はなんなく越境し、人も動いていく。バブル経済崩壊後のコスト競争の中で新興国の成長は著しく、わが国の製造業は製造拠点を海外に移して生き残りを図ろうと努力してきた。ただし、それは国内の雇用の減少を招き、「産業の空洞化」をもたらすことになったことは周知のとおりである。歴史ある大手労働組合の多くは製造業が中心であり、その企業のリストラに歯止めをかけることができないまま組合員の減少を進み、分社化や非正規労働者の増大がそれに拍車をかけてきた現実を目の前にしている。そうした状況の中に立つ労働組合は果たしてどこに立ち位置を設定して組合活動を展開していくべきか。大局の中での在り方を論じた。
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