社会保障における議論は、いち早く企業福祉の中に現象として表れる。大企業は、多くの従業員を抱えるがゆえに現場において社会に生じている様々な問題をいち早い察知する。その困難性や問題の深刻さを読み取りながら、古くは経営社会政策として手を打ち、問題を最小限に押さえようと努力してきた。今、社会保障の中で生じている諸問題に対する取り組みを見る時、企業福祉に対する研究がさらに深められる必要がある点を論じた。もちろん、国家政策と企業の施策に大きな前提の違いがあることは理解した上で、この両方の議論の中に互いに投影される問題を共通テーマとして手法を創意工夫する柔軟な研究に求められる点を指摘した。
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