企業福祉の研究において、1970年代の文献にはすでに「従業員の自立」を促す論調が現れていた。オイルショックによる景気の急速な冷え込みと高齢化の進展、また従業員の生活水準の向上などを背景に「自助・自立」を求めた論調である。企業においては既得権益としての福利厚生を合理化する下地づくりとも言えるが、すでに国の政策レベルでは「生涯生活設計」として議論されていた。雇用の流動性が高まり、また自らの生活を企業に依存するのではないとする考え方の広がりもある中で、ライフプランセミナーがさらにレベルを上げて提案されるようになってきた。「自立支援を目指す企業福祉」がそこに色濃く見られるが、その方向性が意味することとは何か。本稿はこれを論じた。
pp.2-5