「労使共同福祉としての『共済制度』発足の流れ」

共文社 『労働と経済』 1036号

1970年代後半、一部の企業においてグループ共済会が発足した。その中には健康保険組合や厚生年金基金など職域内に存在する公的組織とも連携を図り、従業員福祉を総合的な視野から展開しようと意図するものも現れてきた。1980年代に入って経済のサービス化が顕著となる中で、わが国の大手企業の中には分社化や子会社設立、また企業の買収などによってグループ展開する企業がさらに増え、これらに対応して労働組合もまたグループによる労働組合活動を展開する流れが明確になってきた。従業員福祉の問題には労働組合も組合福祉を独自に展開する以外に労使共同福祉としての「共済制度」を発足させ、これを基軸に総合的な福祉展開を図る動きが見られるようになってきた。本稿では、その動向と背後にある労使の思惑、また社会保障の各々の事情を分析した。
pp.2-5