わが国では1970年に総人口に占める65歳以上の人口が7%を超え、「高齢化社会」に突入した。その後も高齢化の進展は著しく、人生80年時代が叫ばれている。定年を60歳とした場合、社会保障の後退が予想される中で退職後生活は20年あまりとなる。そこでの生活費や健康の問題は中高年労働者にとって極めて大きな課題であり、労働意欲の問題を懸念する企業労使の中では退職後生活を視野に入れた「生涯総合福祉」という考え方を用いて職域福祉の改善に取り組むところも出てきた。いわゆる、それまでの「労働福祉」とする従業員福祉の見方から「生涯総合福祉」とする見方への変化である。本稿は、1980年代における生涯総合福祉プランの登場を捉え、その背景と考え方、また意義などについて研究者の提案を踏まえつつ論じた(労働福祉の世界(4))。
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