カンボジア王国(Kingdom of Cambodia;以下カンボジアと略す)の人口動態では、微増ながら高齢化が進んでいる。統計的には確実に高齢化時代を迎えることは明白である。こうした状況下にあって、カンボジア国内では伝統的に家族内の相互行為が強かったが、経済発展に伴って個人主義化が表面化し、都市部、農村部でも家族変容がみられ、高齢者の生活問題は、都市部、農村部とも多岐にわたっている。これらの事項は、過去2回の調査結果からも明確に示唆されている。
カンボジアでは、「社会福祉」という言葉は、一般的にはどのような意味を持っているかは理解されいなのが現状である。そのため社会福祉分野に関する制度の未整備および国家的施策に対する国家的意識は低いのが現状である。本課題の主体である高齢者に対する社会福祉分野の構築には相当の時間が必要でると推考されるが、今後の国家再建に向けては重要な分野であると位置づけられる。カンボジアの社会福祉を所管しているのは、社会問題・退役軍人・青少年更生省(Ministry of Social Affairs Veteran and Youth Rehabilitation)であるが、社会福祉制度の整備は未整備の状況であり、専門的知識や技術を習得した専門職の人材不足は深刻である。また、カンボジア国内および国際的にもカンボジアの社会福祉研究に関する先駆的研究も含めた科学的・実証的研究は、極めて少ないのが現状にある。今後のカンボジアの社会福祉分野を発展させるためには、社会福祉制度の法整備はもとより専門職の人材育成・養成を図る国家的プロジェクトは不可欠である。
本発表では、国家再建途上にあるカンボジア社会において高齢者福祉分野は重要な分野であると位置づけ、第63回秋季大会に発表した「カンボジアの高齢者福祉に関する一考」の継続研究として、高齢者の生活実態から社会福祉専門職の人材育成・養成および専門教育の必要性であるとの認識に立って発表した。