【はじめに】肥満症はBMI≧25kg/m²に起因する健康障害を伴い減量を要する病態であり,近年は高度肥満症に対する減量手術が行われている.東北大学病院では周術期管理の一環として理学療法を実施している.今回,BMI 67.5kg/m²の高度肥満によりADL低下および術後合併症リスクを有した症例に対し,術前減量および身体機能改善を目的とした理学療法を経験したため報告する.【症例】50歳代女性.若年期より体重増加を認め,40歳代で肥満症および2型糖尿病と診断.その後も増悪し,減量手術適応と判断された.術前リスク軽減目的で入院し,変形性膝関節症,脂質異常症,睡眠時無呼吸症候群,高血圧症を合併していた.【介入】食事療法(1200kcal/日)と併用し,有酸素運動(ハンドエルゴメーター)および上肢中心のレジスタンストレーニングを実施.下肢は疼痛に配慮し関節可動域運動および自動運動から開始し,身体機能の改善に応じて段階的に運動負荷を調整した.【結果】3ヶ月後,BMIは67.5→57.0kg/m²,体重は153.8→130.0kgに減少.膝関節痛はNRS5→2,腰痛はNRS8→0に改善.膝関節伸展筋力はMMT3→4に向上し,6分間歩行距離は10→50mに延長した.Barthel Indexは55→80点に改善した.【考察】体重減少により関節への荷重負担が軽減し疼痛が改善したことに加え,下肢筋力向上がADL改善に寄与したと考えられる.また,個別の身体機能に応じた段階的運動療法が安全な運動継続に有効であった.【結論】高度肥満により身体機能が低下した症例においても,適切な理学療法介入により減量およびADL改善が可能であり,術前管理として有用であることが示唆された.