従来から知識の探索と深化を同時に行う、いわゆる「両利きの経営」の重要性が指摘されてきた。しかし、この分野においては十分な資源を有する大企業が研究の中心であり、資源配分の効果的な考え方等の研究に留まってきた。
一方で、資源の少ない中小企業の場合は、そもそも限られた資源で「探索」を行うこと自体が難しい状況にあり、現実的にどのように「両利きの経営」を行うのか、といった問題に対し、未だ十分な研究蓄積がなされているとは言い難い。
本研究では、受託開発を中心に行ってきた中小企業が、東日本大震災やコロナといった企業の危機を通じて知識の探索活動を強化した結果、自社の受託開発行為にも好影響をもたらすという事例を通じて、中小企業における両利きの経営が補完的な構造にあることの可能性を検討する。