Ⅰ型コラーゲンは骨や結合組織,象牙質に豊富に含まれる線維状タンパクである。Ⅰ型コラーゲンC-プ ロペプチドはコラーゲン分子への変換に伴って産生され,コラーゲン分子の会合とコラーゲン線維形成にとって必須である。近年,C-プロペプチド単体に様々な作用があることが報告され,特にin vitro において硬組織形成に関与する前駆細胞の分化に抑制的に働くことが報告されている。つまり,硬組織の発達・形 成過程での重要性が示されているが,in vivo におけるC-プロペプチドの局在については明らかとなっていない。本研究では,抗Ⅰ型コラーゲンC 一プロペプチド抗体を用いた免疫組織染色を行い,骨および象牙質,セメント質といった硬組織領域における,それぞれの発現局在について調べ,抗Ⅰ型コラーゲン抗体を用いたIHC とプロコラーゲンα 2(1)鎖のcRNA プローブを用いたin situ hybridization の結果と比較検討した。胎生期における下顎骨発生, および歯牙の発生過程におけるC-プロペプチドの局在から, 骨, 象牙質およびセメント質の活発な形成時期にはその基質において集積が認められた。くわえて,ヘルトウィッヒ上皮鞘周囲に認められたⅠ型コラーゲンC-プロペプチドの集積の所見からも,すでに報告されている分化調節機構が骨組織のみならず,象牙質やセメント質の発達過程においても重要である可能性が示された。
29-36.
富澤康彦,土谷昌広,佐藤繁久,高橋一郎,土谷忍,小牧健一郎,秋葉陽介,楠慎一郎,溝口到,笹野泰之,渡邉誠.