近年、WHOやCMOといった国際機関は、子どもの健康を身体活動に加え座位行動と睡眠を含む「健康的な24時間の行動パターン」として統合的に捉え、乳幼児期からの予防戦略を重視している。乳幼児期の身体活動は、単なる運動能力の向上に留まらず、認知・学習能力、社会性、自己効力感といった非認知能力と精神的ウェルビーイングの基盤を構築する。本研究は、この重要性を踏まえ、特に乳幼児期の身体活動と保育における健康教育のあり方について、WHO等の国際ガイドラインおよびイギリスのEYFS(幼児教育基礎段階)の枠組みやロンドン市内の保育施設訪問調査と比較・検討し、日本の保育者養成・保育実践方法への具体的な示唆を抽出することを目的とした。
イギリスの現地調査では、都市部においてフォレストスクールやサーキット構成などを活用し、園庭環境を工夫することで、ウェルビーイングを高める意図的な屋外活動が積極的に行われていた。国際ガイドラインの比較では、WHOとCMOが、1歳以降の乳幼児に対し「終日180分以上」の活動時間と「座位行動・スクリーンタイムの明確な制限」といった定量的基準で完全に一致していた。
日英の政策的比較から、イギリスのEYFSが身体的発達を法定要件(7領域の一つ)とし、ガイドラインの「量的な推奨」をELGという「質的な能力獲得」(成果)に変換する政策的統合を果たしている点が日本の指針と大きく異なっていた。この政策的な違いが、国際基準の現場への浸透度を左右する鍵となっている。
乳幼児期の身体活動は、ユニセフ調査で指摘された日本の「自己肯定感の低さ」を改善する主要な手段となり得る。日本の保育は、自発的遊びを通じた質的経験に強みを持つが、国際的な「健康的な24時間」という量的な基準を意識した指導内容の統合が求められる。特に、保育者養成課程において、国際基準に基づく座位行動制限や睡眠の必要性といった科学的知見を習得し、子どものウェルビーイングを24時間体制で支援できる専門性、「遊びと健康の統合的理解」を深化させることが、日本の保育実践の質的向上に不可欠である。